プロローグ5: 具体例が微妙すぎるんですわ
言葉で伝わるのは伝えたいことの1割であり、残り9割は非言語のこと(表情、声のトーン、その場の雰囲気)でつたわる。モラハラとは、コミュニケーションのハラスメントである。
わたくしたちは言葉で意志をつたえることもありますが、それ以外でも感情や意志を伝えますわ。
「あなたなんて嫌い」
例えばこの言葉にしたって、ストーカーを受け続けたアイドルが眉間に皺を寄せて金切り声で上げるのと、しばらく会っていなかった恋人達が再会するなり甘くぐぜるように言うのでは、まったくニュアンスが違いますわね。
非言語で感情を伝えてくるといえば、まず思いつくのはワンちゃんですわ。
大きな黒目がちの目をきらきら輝かせて、尻尾をちぎれんばかりに振って、明るい顔で”ワン!”といってきたら、嬉しいんだなって思いますわね。逆に尻尾と耳を伏せて視線を反らして”くーん”とないて瞳をうるうるさせたら、とても悲しいってってのが伝わってきますわね。
言葉では直接言わなくても、人であれペットであれそれ以外のことで感情が伝わるものですわね。そして、モラハラはこの非言語を駆使したいやがらせなんですの。
「おまえなんか死んでしまえ!」
「仕事の出来ないクズ!給料泥棒!」
「女のくせにお茶でもくんでいやがれ!」
現在の企業でこんなことを言ったなら、それこそ大問題が発生しますわ。
モラハラ加害者にとって「自分をKILL」してしまうNGワードだからこそ、こんなことは言わなくなっていますの。
「月の出ていない夜は気をつけろ、何があるかわからねぇからな」
こちらはや893さんがお使いになられる「脅し文句」ですわ。「殺す」「ケガをさせる」と言えば法律に触れてしまいますから、凄みを利かせて「NGワード」をさけてるんですわね。
だから、モラハラの具体例は文章にしてみると「微妙」なんですの。
・コピーをしろといわれた
・それは違うと否定された
・まったく意見を聞き入れてくれない
客観的なジャッジにさらされると「えっ?それって悪いのはあなたじゃない?」と言われて、具体的な被害に凄みが利かないんですの。
しかも、相手のモラハラ加害者サイドは周囲を巻き込んで「悪いのはあなたじゃない?」と思わせることにも長けていますから、なおさらなんですわ。
多勢に無勢、仕事をやめることの経済的な困窮への畏れ……そういった被害者の心理をずるがしこく利用してくるんですの。
だからこそ、パワハラやセクハラよりその根本的な病巣はたちが悪いなぁと、実際モラハラを受けてひしひしと感じますの。
真綿で首を絞めるとは、まさにこのことですわね!