本編1-3:天性のモラハラリスト
職場に復活したわたくしは倉庫整理事務にあたることになったわけですが、前述のように2日目からしてさっそくモラハラールの攻撃が始まったんですわ。
最初に苦しんだのは二枚舌攻撃ですわ。
モラハラール「すみれさん、以前やっていた仕事でしょ。ちゃんとやりなさい。いちいち聞かないで」
と言ったかと思えば、同じ仕事で……
モラハラール「すみれさん、休む前と仕事はかわってるんだから、いちいち聞いてくれないと困るわ」
……とか言ってくるんですの。
えぇ、私が空気読めない要領の悪い人だったかと錯覚するぐらいに、気持ちいいくらいに180度発言が変わるんですの。
(このことは後の章でたっぷりお話ししますわ!くそったれ!)
とにかく、私の人格はまっこう全否定。間違ってるのはあなた。おかしいのはあなた。そういうトーンですのよ。
すこし話がそれますが、中世で魔女狩りがあったとき、罪のない人を魔女だと自白するために詰問がされたことがあるんですわ。
その詰問はこんな感じなんですわ。
■パターン1:魔女と認めないケース
尋問官「おまえは魔女か?」
女性「いえ、魔女ではありません」
尋問官「ウソをついたな! ウソをつくのは魔女の証だ!おまえは魔女だ!」
■パターン2:魔女と認めるケース
尋問官「お前は魔女か?」
女性「はい。魔女です」
尋問官「自白しおったか!魔女め!」
こんな感じで容疑を掛けられた女性はどう答えようと魔女に仕立てられ、火あぶりにされたんですの。
沈黙しても「口を開くと魔女とばれるからだろ!お前は魔女だ!」とか、すでに証言が集まっているとか。どうしようが結論ありきのロジックから逃れる術はなかったんですわ。
モラハラというのは、ひとつひとつの言葉や所作は普通なのですが、空気と言うかオーラがおかしくて、わたくしはいつもこの魔女裁判の詰問を彷彿としますの。
一番、わかりやすい感じとしては「嫁と姑の確執」ってところですわ。
「死ね」「やめてしまえ」「出来損ない」といったNGワードをともなわない、ごく普通の短い言葉に、ヒ素みたいに無色透明な遅効性の毒が塗られている感じですわ。(苦い味はするんですのよ)
この空気感は凡庸な文章では伝わりにくくて、それこそ、直木賞作家クラスの文章技術が必要と思えるくらいですの。
しかも! モラハラールは頭の中で思考がフル回転させ、チェスで相手を追い詰めるような感じではなくて、ごく自然に、天性や天然といった感じで意地悪を仕掛けてくるんですの。ある種才能ですわ。
これにはかなり心が痛みましたわ。
こんな普通の言葉が心をボディブローしてくるなんて、思いも寄らないことでしたわ。
しかし、世の中は上手くしてありますわね。
わたくしにとって救世主というか、心強い仲間がそこにはいたんですわ。